Radio 花によせて。
レコードの針を落として、スピーカーから聞こえてくる針が盤を辿るジジジジ……という音に続いて音楽が始まる。ゆったりとした時間。
CDをオーディオにいれて、ヘッドフォンを付け、まるで自分の体の中から歌が生まれているような、演奏される楽器との距離や吐息まで感じられる臨場感と高揚感。
どちらも、大切で。
そして、今日、無意識の外にあったものを思い出した。
ラジオから聞こえてくる、一つ膜を被ったような不鮮明な音楽。
その、不鮮明さの中に、空間に溶け込む柔らかさと切なさが混在している。
クリアでないからこそ、素直に心に響く。
思い浮かぶのは、その音楽と共にあった柔らかな情景。
あの人の、伸びやかな声で始まる、あの歌。
涙が止まらなかった。